風呂に入ると一匹の蚊がヨタヨタと飛んでいる。
おもむろにパチンと両手で挟むと、
中からドス黒い血がベットリと噴き出した。
家の出入り口近くで、お義母さんが、横になっている。
いつ観ても、四六時中、横になっている。
お義母さんは、少し、いやかなり耳が遠い。
それにある種、痴呆気味だ。
今年85歳になった。
タイの60代の平均寿命からすれば、かなり高齢になる。
家人には、兄弟が、7人いる。
お義母さんは、親類中をわたり歩きながら、
最後は、ワスたちの家に留まることが、
先月、暗黙の了解のうちに決定した。
お義母さんは、とにかく横になっている。
喋る時は、耳が遠い分、かなり怒鳴り声になる。
お義母さんが起きている時は、、、
概ね、次の3つ・・・
ご飯を食べている時・・・
仏にお祈りしている時・・・
トイレに駆け込む時・・・
時々、トイレに間に合わずに、
オソソすることもある。
お義母さんがトイレに入る時は、
これまた長い。
ワスが、朝の4時ぐらいにお風呂に入ろうとすると、
決まって、その頃の時間に、
お義母さんは、風呂兼トイレの部屋に籠っている。
お義母さんがトイレを出た後、何故か、
蚊がドンヨリと動作が遅くなったような気がする。
パチンとハジクと、決まって、
真紅の液体を目にすることになる。
<備え付けの蚊取り線香も全然効かない・・・>
嗚呼。。。お義母さん。。。
お義母さんは、ワスのことを
名前ではなく、親愛を込めて、
<ルー(ク)>と呼ぶ。
ルー(ク)は、タイ語で、
「(他人ではない身内の)子供」の意であるから、
さしずめ、、、「息子よ・・・」
と呼びかけていることになる。
嗚呼。。。お義母さん。。。
こんな不肖の息子ではありますが、
こんなガサツな家ではありますが、
いつまでも、健やかで、和やかで、穏やかに、
我々と一緒にお暮らし下さいね。
嗚呼。。。お義母さん。。。